[00:00.74]夏風がノックする窓を開けてみると
[00:06.69]何処からか迷い込んだ鳥の声
[00:11.87]読みかけの本を置き
[00:14.73]「何処から来たんだい」と笑う
[00:17.62]目隠ししたままの午後三時です。
[00:22.99]世界は案外シンプルで
[00:25.28]複雑に怪奇した私なんて
[00:29.13]誰に理解もされないまま
[00:33.38]街外れ、森の中、
[00:36.05]人目につかないこの家を
[00:38.75]訪れる人などいない訳で。
[00:42.32]目を合わせないで!
[00:45.11]固まった心、一人ぼっちで諦めて
[00:49.49]目に映った 無機物(もの)に安堵する日々は
[00:54.59]物語の中でしか知らない
[00:57.42]世界に少し憧れる
[00:59.95]ことくらい許してくれますか?
[01:05.76]淡々と流れ出した
[01:07.90]生まれてしまった理不尽でも
[01:11.14]案外人生なんで。私の中じゃ。
[01:16.12]ねぇねぇ、突飛な未来を想像して
[01:19.86]膨らむ世界は今日か明日でも
[01:24.35]ノックしてくれないですか?
[01:27.26]なんて妄想なんかして
[01:30.68]外を眺めていると
[01:33.35]突然に聴こえてきたのは喋り声
[01:38.83]飲みかけのハーブティーを
[01:41.56]机中に撒き散らし
[01:43.52]「どうしよう???」と
[01:44.98]ドアの向こうを見つめました。
[01:47.77]「目を合わせると石になってしまう」
[01:52.16]それは両親に聞いたこと
[01:54.84]私の目もそうなっている様で
[01:59.59]物語の中なんかじゃいつも
[02:02.63]怖がられる役ばかりで。
[02:05.30]そんなこと知っている訳で。
[02:10.27]トントン、と響きだした
[02:13.22]ノックの音は初めてで
[02:16.65]緊張なんてものじゃ足りないくらいで。
[02:21.72]ねぇねぇ、
[02:22.57]突飛な世界は想像しているよりも
[02:27.10]実に簡単にドアを開けてしまうものでした。
[02:53.73]目を塞ぎうずくまる姿に
[02:56.62]その人は驚いて
[02:58.98]「目を見ると石になってしまう」と言うと
[03:03.20]ただ笑った。
[03:04.39]「僕だって石になってしまうと、怯えて暮らしてた
[03:09.74]でも世界はさ、案外怯えなくて良いんだよ?」
[03:14.97]タンタン、と鳴り響いた
[03:18.62]心の奥に溢れてた
[03:21.82]想像は世界に少し鳴り出して
[03:27.02]ねぇねぇ、突飛な未来を教えてくれた
[03:31.09]あなたがまた迷ったときは
[03:35.49]ここで待っているから。
[03:58.81]夏風が今日もまた
[04:01.21]あなたがくれた服の
[04:03.83]フードを少しだけ揺らしてみせた。